マネー敗戦 2010 Feb 13
日本がいかに国際経済に敗れてきたか、その仕組みを簡潔に鮮やかに描き出した本。
新書ながらこれは名著だ。
『マネー敗戦 (文春新書)』
吉川 元忠
タイトルからは金融技術の戦争のような印象を受けるかもしれないが、実際の成り行きはそんな高度な次元の話ではなかった。
要するに債権国日本が軽々とアメリカに借金を踏み倒されてきたことがマネー敗戦なのだという。
この重大な結果を導いた原因は、日本からの巨額の対米投資が、貿易同様、「ドル建て」で行われたことである。投資額が積み上がったところで、ドルが大きく切り下がった。為替差損という、もたらされた結果にくらべて驚くほど単純な事実をあげるしかないのである。 しかし、大規模な資本の流入が、流入国の通過建てで行われるという例は、歴史的にも、また現代の国際社会よ常識に照らしても、めずらしい現象だといってよいだろう。
これは「今200円貸してあげるから将来1ドル返してね」という約束で失敗したということだ。 考えてみれば当然の話で、1ドル360円からスタートしたレートが90年代には90円を切っていくのだから、多少の利回りでは追いつかない。
実物経済で稼いだカネは、ほぼ為替変動ですっ飛んだのだ。振り返ってみるとこんな間抜けな話はない。
貸し手がアホだった
経済構造に加えて政治動向についても整理されている。アメリカも利権のために圧力をかけてきた責任があるだろうと言いたいが、それ以上に貸し手の日本がアホだった。
いまの日本はバブル崩壊を起点に語られることが多いが、この本を読むとそもそもバブル経済すらこのマネー敗戦の中のサブストーリーに過ぎないことが良く分かる。
バブルの発生はアメリカの借金を支えるための協調政策が原因だし、途中過程でも大蔵省から金融業界への念入りな指導が入っていたから、大枠では基軸通貨ドルを支えるためのストーリーに沿っている。
他にも、BIS規制による日本の銀行の意図的な減速や90年代後半の円高誘導による製造業の国内撤退などマネー敗戦は実体経済にも波及した。
これが単純にアメリカの陰謀という解説だったら説得力がないが、実態として80年代には日本の脅威がアメリカの主要課題だったし、日本は政治的に指導可能なポジションにいたのだから、日本は自ら進んで騙されたとしかいいようがない。
通貨の力学をつかむことが重要
おそらく90年代以降の富の喪失の規模が太平洋戦争に匹敵するかそれ以上だというのは正しいのだと思う。
そうなると現実問題として、日本が国家レベルで浮揚することはほぼ無理なように思う。
残された道は一部の個人が先進国水準を維持するというシナリオだろう。 そのためには、この本が明示するマクロな通貨の力学を理解しておくことが不可欠だと考える。
さもないと気づかないうちに負の遺産の分配にあずかることになってしまう。
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