傷はぜったい消毒するな 2009 Oct 4
キズの正しい治し方として、従来とはまったく違う「湿潤治療」を提唱する本。
この一冊でキズに限らず皮膚のトラブルの相当部分をカバーできる。
湿潤治療は民間療法ではなく、すでに著者の理論に賛同した各地の医師によって実地で採用されているもの。
『傷はぜったい消毒するな 生態系としての皮膚の科学 (光文社新書)』
夏井睦
タイトルでも断言しているとおり、従来のキズの処置では「消毒」がとにかく基本だったわけだが、その消毒がキズの回復とは関係がないどころか、多くのケースでは傷部分の組織を破壊していると指摘する。
保湿がポイント
それでは正しい治療はどうなのかといえば、「湿潤治療」の名のとおり、傷口を乾燥させないことが皮膚組織の再生をあと押しするのだという。
従来のキズ治療では消毒と同時に傷口を乾燥させるアプローチだったから、ここでも治る速度を阻害している。
この本では具体的な治療方法も紹介されているが、いくつか気をつけるべき点もあるので手順は実際に読んで欲しい。 方法じたいはキズを包むだけと非常にシンプルなので、湿潤治療を使えばキズやヤケドはかなりのものが医者を必要とせずに治るという。
逆に、医者に行ってキズ薬を塗った結果、消毒の副作用でキズが治らなくなるケースも紹介されていて、その結果『傷はぜったい消毒するな』という結論になっている。
効果を自ら実感
僕は医師ではないから、この本の内容に対して尾ヒレをつけてはいけないのだろうが、自分のケースでは試してみて効果があったのだと思っている。
疲労から来た手脚の湿疹が悪化して、常時キズとして裂けている状態がここ3年ほど続いていた。当初は皮膚科にも行ったが治すことができず、ステロイドを処方されるだけなので放置してきた。
この本を読んでさっそく試したところ、翌日にはキズがつながりはじめ、一週間経った今まさに周囲の湿疹ごとほぼ完治している。 これは控えめに言っても画期的体験だ。「自然治癒力」という言葉を肯定する気になった。
キズ回復のメカニズムから裏付けられた理論
治療方法がシンプルなだけに、この本の大部分はキズに関連するメカニズムについて解説している。これが面白い。
なぜ乾燥させなければ治るのか、なぜ消毒が有害無益なのか、といった点を理解することが適切に治すためのポイントになる。
そして、現在のキズ治療がなぜその逆になっているのかという点についても経緯を追っている。 湿潤治療はこれまでの治療に対するアンチテーゼという立ち位置になっているが、説明を一通り眺めていると、アンチテーゼ以前にテーゼ自体が存在していなかったのだという印象を受ける。
要するにキズ・ヤケドについては体系的に研究された形跡がない。 「湿潤治療」が登場したことによって初めてキズに対する適切なアプローチが整っていくのに違いない。
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